グルコースとフルクトースが脂肪性肝疾患に及ぼす影響の違い

皆様、「NAFLD」を覚えてますか。(※業務連絡:忘れた人は至急、国試の勉強を復習すること)

非アルコール性脂肪性肝疾患 nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)、
すなわち、
「そんなにお酒は飲まないんだけど、健診で脂肪肝って言われちゃったんですよね
というパターンですね。(健診あるある)

アルコールを(大量に)飲まない人の脂肪肝(非アルコール性脂肪肝=NAFL)、あるいはそれが炎症を起こしたもの(非アルコール性脂肪肝=NASH)を合わせてNAFLDといいます。この「大量に」というのは、具体的にはアルコールを、男性では一日30g、女性では一日20g以上飲む場合ということになっていますので、それ以下しか飲まないのに脂肪肝が〜!?・・という場合にはNAFLDということになりますね。

NAFLDの原因として過食からくる肥満、特に欧米型社会では高脂肪食のほか、砂糖入り飲料の影響が大きいとされています。
日常の食生活では、砂糖(蔗糖)や果糖、すなわちグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)の組み合わせから成る食品を我々はしばしば摂っているわけですが、実はこのグルコースとフルクトースは、同じ構造なのに代謝もインスリン制御についても異なっており、特に脂肪合成への寄与に関しては違いが大きいことが指摘されています。

(業務連絡)・・・・このあたりは、このブログを見ているかもしれない某大学某学科の卒業生の皆様の多くはT田先生に教わったと思いますのでいろいろと思い出しておきましょう。

・・・であれば、果糖とブドウ糖は、脂肪性の肝疾患NAFLDにも、異なる関わり方をするのではないかと思われますが、そのあたりはまだ明らかになっていません。

ということで今回の論文ですが、

Samir Softic et al.
Divergent effects of glucose and fructose on hepatic lipogenesis and insulin signaling.
J Clin Invest. 2017. doi:10.1172/JCI94585
https://www.jci.org/articles/view/94585

こちらは、高脂肪食(high-fat diet (HFD) または普通食(対照食)をマウスに与え、また飲用水に果糖(フルクトース)またはブドウ糖(グルコース)を加えて飲ませるという動物モデルを用いて、上記のリスクのメカニズムを研究した、という論文です。
ちなみに、普通食では脂質エネルギー比21.6%、高脂肪食HFDでは60%となっていたようです。
また、糖はいずれも30%の濃度だったようです。甘い水を与えられたネズミの表情はどんなだったのでしょう。
ネ、ネ、ネーズミ来い。こっちの水(以下略

このような食餌を10週間・・・。
当然、対照に比べて高脂肪・糖負荷水を飲み食いしたマウスは激太り(っていうのか?)、脂肪肝、内臓脂肪著増していました。

このとき、普通の食事を摂らせたマウスでは、水に果糖・ブドウ糖どちらが入っていても大きな差はありませんでしたが、
高脂肪食の群では、ブドウ糖水のマウスに比べて、果糖水マウスの方が体重もインスリン抵抗性とも著明に上昇。肝腫大も著明。一方、ブドウ糖飲みマウスの方は、同じ高脂肪食を摂っているにも関わらず、面白いことに糖の含まれない(普通の)水を飲んだマウスと比べて体重もさほど増えず、インスリン抵抗性も悪くなかったという結果に。

加藤 果糖が何か悪いのか??

ということでこの後、肝臓の脂質合成に関わる酵素発現やアミノ酸レベルについて、遺伝子やタンパク質レベルでの解析が行われています。(図表も多いので、詳細は本文を見て下さい)

その一部、脂質合成に関わる主な転写因子であるChREBPとSREBP1c の発現についても、果糖・ブドウ糖の群の間で違いがみられたとのことです。
具体的には、ChREBP-βの発現はいずれの糖負荷でも増強されたものの、SREBP1c発現は果糖を負荷した群のみで増強されていました。また、SREBP1c遺伝子によって作動する多くの脂肪酸合成遺伝子も高脂肪食+果糖負荷によって発現が上昇し、この結果、肝臓でのインスリンシグナル(インスリン刺激による情報伝達)が減少したとのことです。
これに対して、ブドウ糖を負荷した群では中性脂肪(トリグリセライド)の合成に関わる遺伝子が発現増強する一方、上記のインスリンシグナルはむしろ改善させました。
まとめると、果糖負荷は脂肪酸合成に関連する遺伝子の発現を上昇させるが、ブドウ糖(グルコース)は中性脂肪合成に関連する遺伝子発現を増強させる、という異なる作用が示されました。

メタボローム解析とRNAシークエンス解析によっても、果糖とブドウ糖の負荷が、ともに肝臓での脂肪蓄積を同程度に起こしながらも、肝代謝には異なる影響を与えることが確認されています(詳細省略)。

最後に、フルクトース代謝に関わる酵素ケトヘキソキナーゼ(フルクトキナーゼ)の役割について検討されています。
果糖を負荷した(果糖入り水を飲ませた)マウスでは、フルクトース代謝経路における最初の代謝酵素であるケトヘキソキナーゼketohexokinaseの発現が増強されることがわかりました。
さらに重要なことに、同じ酵素についてヒトで見てみると、脂肪性肝炎(NASH)のヒト(肥満のため肥満外科手術を受けた若年患者さん由来のサンプルだそうです)の肝臓でも、肥満モデルマウスと同様に、この酵素の発現が増強していました。

さらに、マウスの肝臓のケトヘキソキナーゼの遺伝子をsiRNAを用いて発現抑制(ノックダウン)すると(この遺伝子が働かないようにすると)、果糖を負荷したマウスでも脂肪性肝炎や耐糖能が軽快しました

以上から、

果糖負荷→脂肪性肝疾患 という過程には、果糖代謝・ケトヘキソキナーゼ、すなわち我々が日常よく摂取している果糖が、重要な役割を果たしているであろうということが示唆されました。
(NAFLDのケースなどでは)同じエネルギーを摂取するにしてもフルクトースをグルコースに切り替えた方が、インスリン抵抗性の改善につながるのではないか、と著者らは述べています。

なお、高脂肪食+果糖マウスでは肝臓でほとんどのアミノ酸レベルが低下していた一方、グルコースを与えた群では分枝アミノ酸の低下と非必須(内因性合成)アミノ酸の増加がみられたということです。添加する糖が、脂質だけでなく肝臓のアミノ酸レベルの違いにも影響することを示すデータです。

だいぶはしょりましたが長くなってしまいました。たくさん図表がある論文ですので、興味のある方は原文に当たってみて下さいね。

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