日経メディカル「糖尿病患者の糖質制限に3つの陥穽」

日経メディカル9月号をぱらぱら見ていたら、こんな記事が出ていました。

「糖尿病患者の糖質制限に3つの陥穽」
蛋白質摂取増による腎機能悪化や低血糖、低栄養に注意


この記事にもあるように、近年「糖質制限」がとても「流行」していますよね。
どのくらい制限するかは流派(?)によって違いますが、いわゆる「穏やかな糖質制限」ではだいたい1日あたり130g程度までにするということになっているようです。
この記事では、2型糖尿病患者さんを対照に、この糖質制限を行った群と、エネルギー(カロリー)制限した群とを比較し、糖質制限群でHbA1cが有意に低下していたという報告が紹介されています。

とは言え、安易に、もしくは自己流で糖質を制限することには、ともすればなんらかのリスクも伴いがちです。

ということで、タイトルの「陥穽」として記事中で挙げられていたポイントを紹介します。

陥穽1:蛋白質増で腎機能悪化
これは誰もが思いつく危険性の一つですね。
とは言え、糖質制限食を推進している先生方のお話によれば、例えば北里大学の山田悟先生(糖質摂取量130g/日と指導)によれば”GFRステージG4まで低下している患者でも、糖質制限で腎機能の悪化を抑制できたという症例報告がある”(以上引用)とのことですし、もっと厳しい糖質制限食(糖質30-60g/日)を指導なさっている高雄病院の江部康二先生は”クレアチニン値が1.2-1.3mg/dL程度までの患者”では、腎機能をこまめに評価しながらであれば問題ないとの認識でいらっしゃるそうです。
ちなみに、先日講習会で山田先生のご講演を拝聴した時、「今後、糖尿病でのエネルギー制限と並んで、腎疾患での蛋白質制限は不要になると思っています」という趣旨のご発言がありました。そうなれば患者さんには大変な朗報!ですので、今後の研究に期待・・ですね。

それから

陥穽2:薬の効き過ぎで低血糖
陥穽3:低栄養で筋力低下


この2つは、まあそうですよね。(って、いきなり説明が雑に
糖質制限を行う場合には、使っている薬や栄養(摂取エネルギー量)などにきめ細かい注意が必要です。このあたりは、外来や栄養指導などで患者さんと相談や確認をしながら、しっかり見ていく必要がありますね。

・・・という感じですが、詳細は本誌を読んでいただくとして、記事中に書かれているように、糖尿病患者さんの糖質制限は、

“現時点で示されているのは、長くても数年程度の短期間の研究成果のみ。あくまで研究段階の食事療法といえる。”

というのが現時点での認識かと思われますので、あくまでもしっかりとした管理のもとに、リスクとベネフィットを理解した上で取り組みたいものです。

記事の最後の方には、順天堂大学附属静岡病院糖尿病・内分泌内科の佐藤淳子先生のコメントが出ています。以下の一文ですが、皆様もうなずかれるかもしれません。

「糖質制限により蛋白質や脂質の摂取量が増えることで、本来予防すべき合併症の発症を促進しないかどうか、引き続き研究が必要」(以上引用)

さらに、
以上は糖尿病患者さんについての議論なわけですが、
糖尿病ではない、もしかしたら肥満ですらない、健康な方が糖質制限を長期間行うとどうなるのでしょうか? 「さらに健康になり、寿命が延びる」のでしょうか(すでに日本人は長年ご飯をたくさん食べていながら(?)長寿国なのに、ご飯やスイーツを我慢すると “すごく”長寿になる・・のか?というギモンが・・)

それに関連して、たまたま「栄養学雑誌」で下記の論文を見つけたのでご紹介します。栄養士の皆様は、すでに学会等でご存知かもしれませんね。
動物実験による研究ではありますが、肥満でない場合の低糖質食の影響について、必ずしもベネフィットばかりでない(むしろ動脈硬化性病変発症に影響する)可能性が示唆されています。

門脇 真也, 蕪木 智子
非肥満マウスにおける低糖質高たんぱく質食の影響
栄養学雑誌 74(3): 51-59, 2016

http://doi.org/10.5264/eiyogakuzashi.74.51

というわけで、お手元に上記の日経メディカルや栄養学雑誌(その他の本でもいいですが)があれば、今後の議論や検討の参考になさっていただければと思います。

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