漢方薬と「心身症状」、慢性疼痛

皆様、楽しい夏(休み)をお過ごしでしょうか。

昨日外勤先で、「漢方医学」という冊子(vol.40, no.2)を読ませていただく機会がありました。
外科領域の特集だったのですが、ケースレポートとして

「療養病院の患者の抑うつ、気逆からくる心身症状に対する抑肝散の使用経験」
中尾健太郎、ほか:漢方医学 40(2), 55(111): 2016


という記事があり、療養病床での心身症状に対する漢方(抑肝散)の効果について述べられていました。

ちなみに抑肝散とは、Wikipediaを引用しますと

https://ja.wikipedia.org/wiki/抑肝散
https://en.wikipedia.org/wiki/Yokukansan

というわけで、「白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、川芎(センキュウ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)」からなっており、「肝」を「抑」制する薬剤であるということになりますね。
※原典では白朮(ビャクジュツ)だそうですが、日本では(というかツムラ抑肝散では)創朮(ソウジュツ)を用いています。

ちなみに漢方でいう「肝」は、西洋医学の、というか我々が普通に考える「肝臓」とは異なる作用を有する臓器(というのか)であって、「気」の流れを司り、感情や自律神経を調整する働きを持つということです。

先のWikipediaでは、抑肝散の効能・効果として、

虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症
平肝熄風、気血双補。
やせ形でやや虚弱、腹直筋に緊張が見られる患者の痙攣、情緒不安、不眠、自律神経失調症、血の道症、夜泣きなどに用いる。

とありますね。(そうなのか・・・)
それに、最近(でもないか)では、アルツハイマー型認知症の行動・心理症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)やうつ病などにも効果があるとされています。
(すみません、私漢方に不勉強なので詳しくはまたいずれ・・(汗))


ということで、
先の「漢方医学」のケースレポートでは、
亜急性期病院に主にリハ目的で入院した、さまざまな基礎疾患を有する患者を対象に、痛み(帯状疱疹後頭痛など)、手指のしびれや冷え、パーキンソン病の治療薬の日内変動(気分の変動)に対して抑肝散が有効であったケースを報告しています。

例えば「症例1」では、ロキソプロフェンが無効であった頭痛の症例(49歳女性)に対し、「帯状疱疹後頭痛」と診断後、抑肝散を追加投与したところ投与後に痛みが寛解したとか。
(注:三叉神経領域に帯状疱疹を発症した後に頭痛が出現した症例)

メカニズムとしては、神経疾患や疼痛に関与する興奮性神経伝達機構であるグルタミン酸神経系への作用(グルタミン酸トランスポーター賦活作用)などによる神経抑制が考えられており、その機作からは抑肝散が神経障害性疼痛に対しても有効ではないかと示唆されているとのことです。
なお、今回紹介されている症例の一部では、しびれやピリピリ感について、プレガバリン投与でも効果がみられなかったケースに抑肝散を処方することで症状が軽快したと報告されています。

もちろん漢方薬にも副作用があるわけですから(抑肝散であれば、例えば甘草が含まれてますから低カリウム血症とか)、誰にでも気楽に漢方を処方し続けていいということにはならないわけですが、本文の結論部分にあった

 亜急性期病院に入院している患者は必ずしも経口摂取可能でなく、(中略)漢方薬のエキス製剤は水に容易に溶けることから、経口摂取不可の患者に対しても有効であると思われる。

という部分に、今後漢方もうまく取り入れていけたらいいのではないか、と思った次第です。

ちなみに関節リウマチについては、先の「釣藤鈎」がリウマチに効果があるとかないとか以前読んだ記憶がありますが、他にすでにエビデンスの確立した「抗リウマチ薬」が多数あるので、関節リウマチ自体に対する漢方薬の出番というのは現時点ではほぼない、というか相当限られているように思います。が、合併症については処方されることもありますね。
慢性疼痛に対する漢方の効果、リウマチ領域での応用も含め、今後の情報の蓄積に期待したいところです。

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